推薦入試の現在地を知る−変化の本質と、求められる力。

大学入試において存在感を増している推薦入試(学校推薦型選抜・総合型選抜)。「一般入試とは何が違うのか」「親としてどうサポートすればよいのか」など、不安や疑問を抱く保護者も多いのではないでしょうか。
本記事では、高校生の娘を持つライターが、長年多くの受験生を導いてきた大手予備校・駿台の推薦対策講座の担当者に取材を敢行。推薦入試の最新動向や大学が求める力、そして家庭でできる伴走のポイントについて伺いました。

推薦入試の激変——問われているのは「クリティカルシンキング」

―大学入学者全体の過半数が一般入試以外。私立大学においては、全体の6割弱が学校推薦型選抜・総合型選抜で入学していて、一般選抜を大きく上回っているというデータがあります。大きく変化していると感じる推薦入試、実際に変わったことを具体的に教えてください。

端的に言うと、一番の変化は小論文の出題回数が劇的に増えたことです。図表読み取り、課題文型、一言だけの短い課題論文などバリエーションも豊富になりました。

―大学側が受験生に対して求めているものが変わったということの表れでしょうか?

そうですね。小論文は知識ではなく、思考力を問われるテストです。さらに言うと、クリティカルシンキング(批判的思考)ができるか否かが肝になる。非常に象徴的な例は、2年前にある国立大学の推薦入試にて出題された小論文試験で、心理学は重要じゃないということをAIに3点くらい書かせたものを読んだ上で、受験生の考えを問う。AIの言う通りですという答えならアウト。

私の考えるクリティカルシンキングというのは、相手の意見を批判するだけでなく、それを踏まえて提案を示すことです。簡単にいうと、AIからの批判を受けて、まずはそれをリスペクトする。その上で、試行錯誤しながらも問いに踏み込み、自分なりの考えを展開していけるかどうかということを大学側は見ています。

正解のない時代に求められる「思考のプロセス」

―テーマに対して批判的な観点をもって論述する力が問われているのですね。しっかりとした結論を出すことも重要なのですか?

きれいな結論よりも比較、迷い、判断のプロセスを見ています。なぜなら学部によって若干の違いは出てきますが、例えば医療やヒューマンサービス関連では、相手が人間なので正解がありません。今の時代になぜ思考力が大切かというと、正解に辿り着いておしまいではなく、正解の次にさらに課題が出てくることの繰り返しだからでしょうね。

課題解決のために必要な思考力を身につけることは、もちろん大学受験を終えた後の人生にも役立ちます。例えば、私は企業の論文審査もやっているのですが、課題に対してどう改善していくかを書かせるものは非常に多いです。

思考力を磨く鍵は「自問自答」と「仮説構築」

―思考力を磨くために必要なことはどんなことでしょうか。

これに関しては駿台の論文指導が始まった35年前から一貫しているのですが、自問自答を大切にすることです。まずはぼんやりと自分の思考について考えることから始める。実はこのぼんやりが重要です。そこからたくさんの仮説を立てて論証することが論文でもあるし、志望理由書でもありますから。

―具体例があれば教えてください。

例えば、以前こんな生徒がいました。中卒で調理師免許を取り、板前をやっていたけれど、20代の終盤になって医師になりたいと気づいた人がいた。料理も医療も、人を喜ばせたいというその人の根っこにある本質は似ていたんですね。

だから、そういう思いを僕らが押し潰してはいけないと考えています。自問自答を繰り返し、仮説を立てて進む生徒から、その思いを僕らが上手く引き出してあげる。まさにこれが駿台の“愛情教育”ではないかなと思っています。

家庭で保護者ができる伴走と関わり方

―子供に併走する親が家庭でできることはありますか?

たくさんあります。『何がしたいの?』と生活の中でクエスチョンを投げかけることは推薦入試の根本になります。ただ、これから入試に挑む生徒たちが具体的な目標を持っている、ということはそれほどないですよね。自分を振り返ることはしないし、恥ずかしくて口に出さない。

だから好きなことから聞いて、いろんな話をしていくと、生徒自身が自分はこういう人なんだ、と見えてくることがあります。今までの生活や学びの中の生徒の本質や適性が入っていますからね。そこの道づくりとか方向性を決めるサポートくらいは多少してあげた方がいいかもしれません。そうすることで生徒が志望理由書で書けそうなことも出てきます。

もうひとつは、そのためにもさまざまな経験をしたほうがいいですね。この人いいなというロールモデルを見つける機会、そのための出会いを増やすことは大切です。

推薦入試の準備時期と「実績」に対する誤解

―推薦入試には、やはり適性はありますか?また受けたい場合はいつまでに決めるべきですか?

私もよく申し上げているのですが、推薦入試は決して楽な入試ではありません。例えば夏期講習会中、一般入試で ある大学の法学部を目指している受験生が伸び悩んでいる。そうすると推薦入試も受けようかと安易に考える人はいますが、それは甘いです。

枠が狭い人気校は特に、特定の分野に興味がある人や自己分析ができる人がやっぱり強いですから。推薦入試は出願までのスケジュールも早いので、できれば高3の早い段階で、一般入試だけでなく推薦入試も含めて目安はつけておいた方がいいと思います。

―特別な経験がないからと推薦入試自体を諦めてしまう子が多いと感じます。活動実績がなければ不利だと思うのは間違いですか?

こういう質問が多いのは、短期留学や医療機関への訪問など、生徒の学びを支援する目的で大人がさまざまな機会を用意するケースが増えていることもあるでしょう。大切なのは、実績の有無ではなく、その経験から何を学び、大学での学びや将来の仕事にどう紐づけていくかです。別に実績がなくても、日頃の生活の中に、実は受験生本人の適性や能力が含まれていることはたくさんあります。例えば、失敗体験の中でどういうことを心がけたか、工夫したか、努力したかを掘り下げることの中に将来の種や芽がありますから。